古本屋の知識

本に関する知識は多岐にわたって、長年の蓄積によって身につくものです。これ を短期間で習得するのは、そう簡単なことではありません。例えば建築書を扱う場合であれば、日本を代表する高名な建築家の名前くらいは、スラスラと出てこ なくては話になりません。 もっとも、自ら進んで本屋をやろうというくらいの人であれば、少なくとも自分がおもに扱おうと思っている分野の本に関しては、もともとが好きであり、相当な知識をもっているはずです。 けれども、古本屋をやろうとするなら、いまのことだけに詳しくてもダメなのです。時代のトレ ンドはもとより、歴史的な流れについても勉強しておく必要があります。 先ほどの建築を例にとると、現在の最先端の建築は建築史のどういう流れの結果なのか、といっ た視点をもっていることが重要で、さらには、日本の建築史研究のパイオニアである辰野金吾や伊東忠太といった人々について、また、海外の偉人が日本の建築 をどう評価したか、それが現代にどのような影響を与えているかなどについても、押さえておきた いものです。 さらには、こうした建築自体に関する知識はもちろんのこと、少し掘り下げれば工学や物理学と いった理系分野や、美術にも深い造詣が求められますし、建築物のなかで営まれる人聞の生活の背 景にある民俗や宗教の流れにも通じていれば、「さすがは古本屋さん」と一目置いてもらえるでしょう。

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